小説の最近のブログ記事

銀河ヒッチハイク・ガイド

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hitchhiker.jpg人類は地上で三番目の知能だ、というファイアボールの台詞の元ネタがこれだと聞いて読んでみました。

バイパス建設のために主人公アーサーの家が破壊されようとする事件と、それにまつわるお役所仕事の描写から始まるという、何とも辛気くさい開幕です。宇宙に飛んでからは次から次へとアイデア山盛り。文体そのものは淡々としていて、視点は一歩引いた感じがします。

役所仕事ネタといえば、この作品より前ですが、モンティ・パイソン「THE GAS COOKER SKETCH」(1971)を連想しました。アメリカでも刑事コロンボ「パイルD-3の壁」(1972)がありましたが、同年代ですね。

マーヴィンはひょっとして、ギャラクシーエンジェルのノーマッドの先輩だったりするのでしょうか。

一見すると散漫なライトノベルと似た文体ですが、どーでもいい裏話に見えるものが後からほぼ伏線として回収されていくので、作り込まれているのは間違いありません。ゼイフォードの脳みその話がいつ回収されるのかわかりませんが。

地球は作られた惑星だった、それも我々俗人には何の意味もない目的のために、という衝撃の種明かしですが、園山俊二「ギャートルズ」冒頭もそんな感じでしたね。厭世的ですが肩肘を張らないのは素敵なことです。

ニャル子ドラマCD

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nyarlathotep.jpg「這い寄れ!ニャル子さん」のドラマCDをようやく聞きました。

5ヶ月以上も積んでしまい、気が付いたら第二弾の情報が公開されるという完璧なタイミングになりました。もちろんQRコードもアクセスしてません!

内容は原作1巻のものとなっています。楽しい楽しいルルイエランド。

ナレーターが古谷徹。バックボーンとネタがごた混ぜになったアホな解説には、これほどの適任もいないでしょう。
声はかなりイメージに合ってます。ニャル子に阿澄佳奈のハイテンション、真尋に喜多村英梨の投げやりさがたまりません。

ノーデンスの島田敏が一番ぴったりだったかもしれません。少し情けない感じの、コミカルキャラを演じる時の島田さんです。私にはハンブンブルグ兄が一番印象が強いですが、負け台詞が素敵ですね。
U2T(ウボ・サスラ・ユニバーサル・テレビジョン)と「D線上のアナスタシア」のラスト大暴露シーンは、本領を発揮されています。

完成度高いです。ドラマCDには良いイメージを持っていませんでしたが、これは素晴らしい。って、なんでドラマCDのイメージが悪くなっていたのかと思ったら、一番最近聞いたのが「くるくるトライアングル」だったからですね...。

這い寄る混沌

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最近の漫画では、岡田芽武「ニライカナイ」にラスボスとしても登場した、邪神一のトリックスター、這い寄る混沌ことニャルラトテップ。
ネフレン・カをそそのかし「暗黒のファラオ」と呼ばれる原因を作ったり、ランドルフ・カーターのカダス行きに際して随分と懇意にしたりと、宇宙規模の荒ぶる神々の中で人間を対話相手(または遊び道具)とみなす変わり者。

であればこそ人間世界にアレンジし甲斐があるわけですが、遂にラノベの餌食になってしまいました。それが逢空万太「這いよれ!ニャル子さん」です。
圧倒的パワーを持ちながら妙に弱点があり、性格が外道でおまけにショタコンという、非常に倒錯的な女の子になってしまいました。
冒涜的とか名状しがたいとか、お決まりの枕詞が付く様々なおバカなアイテムも登場します。目覚まし時計も胸キュンです。

某巨大掲示板風の言い回しが若干鼻に付きますが、既存のクトゥルー作品群のモチーフをかなり広く吸収しており、乱読しただけの私などでは及びも付かない次元です。表現にはパロディが小出しにされ、是非はともかく知っている人はそれだけで楽しめますが、舞台作りもSF的な独自解釈を行なったものになっているので、こちらも新しい刺激を与えてくれるでしょう。

評価は二極分化していると二巻の巻末で筆者が書いていますが、さもありなん。しかしながら間違いなく理解してやっている方なので、恐怖感はともかくスケールは派生作品では負けていません。むしろ某エログロトンデモ拳法ものとかを読むぐらいなら、こちらの方が原作群の持ち味を活かしているような。

年の功があるのでパロは気付いた方だと思いますが、「不埒なお前のその命が~」とか、ながい閣下のロード時代が出てくるとは思いませんでした。救い難い功夫をお持ちのようで(褒め言葉)、筆者には今後とも幅広い感受性を保ち、ダメ人間の王道を突っ走っていただきたいと応援する次第です。

アルスラーン戦記13巻

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エステルが...(涙

若い主要人物が田中先生の魔の手にかかってしまいました。ストーリー上は侵略者としてではないルシタニア人を代表するキャラクターでした。そのポジションはドン・リカルドことパラフーダ(白鬼)が引き継ぐことになりますが、元気っ娘が消えるのは悲しいですね。

物語冒頭で銀仮面と魔導の霧という、強烈な二つの助力を得て登場した悪役国家ルシタニアは、昨今は何度も暗黒時代と表現されており、ギスカールもミスルにいるため、もうエステルとドン・リカルド以外では語られることはなくなりました。その一人が退場してしまったのです。

12巻ラストでエステルが怪我をして、命があるだけ幸運だと医者に言われたときでさえ、死ぬとまでは想像していませんでした。銀英伝のワーレンとは時代が違うので義足は無理としても、杖でもついてひっそりと暮らすぐらいの結末はあるだろう、と思っていたのですが。

何巻だったか、エステルはアルスラーンにとって初めての「顔のあるルシタニア人」だったとかいう表現があったように思います(銀英伝かも?)。知り合いでもいなければ、人は相手をグループの一員としてしか認識できないのです。

「もう少し月日がたてば、お前は一人前の異教徒になって、角や尻尾がはえてくるのだろうな。でも、どんな姿になっても、わたしはお前の正体を見破ってやるぞ」
7巻ラスト、ヒルメスが宝剣ルクナバードを携えたアルスラーンと対決して退けられ、アンドラゴラスとイノケンティスが墜落死し、さらに蛇の姿の尊師が討ち果たされた慌ただしいあのラストの後、エステルがパルスを離れる際にアルスラーンに告げた言葉です。しかし姿が変わったのはアルスラーンではありませんでした。

意識せず感情移入していたと気付かされました。小説の登場人物の死に虚脱感を覚えたのは久しぶりです。

さて、ギスカールはミスルで内政に勤しんでいるのか描写なし。ヒルメスからもナルサスからも、しばらく動かないだろうと太鼓判を押されています。

ヒルメスはマルヤムでナバタイからの侵攻に対応を開始。ナバタイに誰か頭の回る人がいそうな雰囲気ですが、まだアカシャには到着しておらず、具体的な描写はこれから。ヒルメス陣営に加わることになる相手のような感じがします。
なお、かつて黄金仮面ヒルメスだったシャガードが最後の活躍をしました。その際、典型的な死亡フラグが見れるので請うご期待!

魔将軍イルテリシュはますます絶好調。ガズダハムはすっかり中間管理職になってしまいました。チュルクから生身の人間ジャライルが加わり、副題に繋がります。

余談ですが、私の中では何人かのキャラに妙なイメージを持っています。ドジっ娘アイーシャはそばかす似合いそうというのは普通だと思うのですが。
ギスカール...「ロードス島戦記」のバグナード(存在感のある悪役顔)
イルテリシュ...「ドラゴンクエスト・アベル伝説」のルドルフ将軍(人外すぎる...)
エステル...「プリンセスクラウン」の女王グラドリエル(牢屋の食欲魔神っぷり?)
クバード...「北斗の拳」の山のフドウ(太くない挿絵なのになぜ)
イノケンティス...「ドラゴンハーフ」のシヴァ国王(丸いイメージは多いはず)
パラフーダ...「小鉄の大冒険」の風祭蘭白(そこまで巨体じゃなかろうに)
想像するのも小説の楽しさですね。

究極国王あ~るすら~ん

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「アルスラーン戦記」が出版社を移籍していたと知ったのはつい昨年でした。最近になって続刊を入手、既刊最新の12巻まで読み終えたところです。

ザッハークの手下共が地上に出てきちゃいました。一方でヒルメスとギスカールも地歩を固めて来ています。特にヒルメスの方は急激に動きました。シンドゥラがもう一度来ることはないと仮定しても、パルス、デマヴァント山の下の連中、ヒルメスのミスル、ギスカールのマルヤムと四つ巴になるようです。チュルクが動き始めましたが現状では未知数。
もっとも、既に交易面ではちょっかいを出していますし、このまま闇の眷属が暴れ続ければ、地理的に近いシンドゥラの御仁の退屈の虫が騒ぎ出すのは目に見えているでしょう。

この作品に手を付けたのは、「サイレント・メビウス」劇場版を見に行った際、同時上映で偶然見たのがきっかけでした。1991年といったら17年前ですか。既に「銀河英雄伝説」は読破後だったと思います。ダリューンの格好良さに惹かれたのですが、今は特に好きなのはヒルメスとギスカールの敵勢力二人です。もちろんダリューンもアルスラーンも、大半の登場人物に感情移入するのが私の読み方なので、蛇王一党以外に嫌いなキャラは皆無です。

ヒルメス好きの人は多いと思われますが、ギスカールが好きな人はかなり少ないのではないでしょうか。というのは、ヒルメスが武人(しかも薄幸)なのに対して、ギスカールは野心の苦労人ですが仁義の人ではないからです。打算優先、エステルに濡れ衣を着せてしまいますし、悪役一直線です。しかし、アルスラーンを甘ちゃん、ヒルメスを軍記物語の王道キャラとすれば、ギスカールが一番為政者の姿でもあり、彼の妥協点がどこにあるのか気になって仕方ありません。ヒルメスの妥協点は比較的想像しやすいのですが(対パルス敗戦後にマルヤムで落ち着く...本命、討ち果たされる...対抗、落ち延びてひっそり...押さえ、パルス征服...穴)、ギスカールは見えません。

やがてルシタニアに凱旋するのでしょうが、そこから先に、或いはその前に何をしようというのか。ミスルとの同盟はあるのか(全面対立はないにせよ)、パルス包囲網を仕掛けるのか、それとも漁夫の利を取ろうとするのか。
物語も佳境に入りつつありますが、もうひと波乱を楽しみにしていられそうです。
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