倒置

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言語にも色々ありまして、日本語は最後に述語だとか英語は主語のすぐ後に述語だとか、そのあたりの話題は英語の授業にて最初の方で耳にしたような気がします。言語の構造に意識が向かうきっかけです。

ガキんちょの時分は「白人=英語=欧米」といった大雑把な感覚を持っているので、そこに「ヨーロッパの言葉なんか全部方言程度の違い」みたいな不正確な情報が加わると、「綴り以外は英語みたいなもの」と思ってしまうわけです。

が、なんか変だな、と思ったのは錬金術の本で「マテリア・プリマ」という表現を目にしたときでした。ファンタジー方面には主物質界「プライム・マテリアル・プレーン」という用語がありまして、似ていますが語順が逆です。

ヨーロッパの共通語としての役割があったのかどうか、学問はラテン語という長年のしきたりがあったそうでして、錬金術用語もラテン語です。現代でも知識層のたしなみだと聞いたことがありますが、そのラテン語は形容詞が後なのです。

# 「マテリア・プリマ」は要するに一番エライ(架空の)物質のことで、錬金術なので霊的にもエライ

これは元々はアリストテレスが言い始めた言葉で、「プリマ・マテリア」という表記もあるのですが、こっちは古代ギリシャ語由来だから? なのでしょうか。調べたら古代ギリシャ語は英語と同じく形容詞が先のようですし。

ともあれ、これを見て前置修飾の言語と後置修飾の言語があるのだと気付きまして、ふと「フィルム・ノワール」という言葉を思い出しました。そういえばフランス語もラテン語系だったなあ、と一人納得したのです。

さて話は少し変わって、倒置法はあえて文節を入れ替える強調構文ですが、倒置された結果が他言語にとって自然な順序だった場合も、翻訳の際は倒置し直すか、何か強調を入れた方が良いのでは、と思うことがありました。それが「指輪物語」のあの銘文です。

"One Ring to bring them all, and in the darkness bind them."→「一つの指輪は全てを捕らえて、暗闇の中に繋ぎとめる。」

これが「一つの指輪は全てを捕らえて繋ぎとめる、暗闇の中に。」とかではないか、ということです。もちろん根源的には英語であろうと頭の中に認識される順は耳から入る順に違いないでしょうが、そのちょっと上の階層ではどうなのか。

ところで"bring"が「捕らえる」と訳されているのも面白いですね。直訳「連れて行く」ですが、ゴクリがそうであったように半ば自発的にサウロンのところに向かうので、虜になることを表した訳であるように思います。

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