ホーキング宇宙を語る

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高校1年の頃にハードカバーを買って放置していましたが、少し前にふと思い付いて実家から持ってきました。もう四半世紀前ですねえ...。

相変わらず電車の中でしか読書する習慣がないため、なお手が付かず。ところが地元の古書店に文庫版がありまして、何となく入手して読んでみたら面白い。

序盤が科学史で、ここがとっても万人向けです。一人残らず読んでほしいぐらいに、科学者が何をどう考えたかを追えて、とてもリアルな感じがしました。歴史の授業も誰が何をどう考えたかがわかると面白いと言いますが、まさしくそれです。

つまり、数式は意味がある、ということです。人間的な意味。例えば投げた石が描く軌道は放物線として数式にできますが、瞬間の位置も、速さも、軌道全体も、人間は本物の石を想像しながら理解する、ということです。

想像することで、今度はその数式でどこまで表せるかがわかってくる。それによって、新たに何がわかるようになったかが把握できる。つまり、科学が進歩したということです。

この段階は想像こそが重要で、数式に代入すべき値は具体的でなくて構わないのですが、すると...万有引力の法則をあれこれ想像することで、宇宙が収縮するかもしれない、なんて話になるのだそうで。

高校の物理の授業でさっと触れられて終わってしまうあの単純な式が、宇宙物理学の転換点の一つだったなんて、それを知らずに終わることは、ひょっとして理科離れの原因の一つではないか、などと余計な心配をするぐらい衝撃的でしたよ。

誰が何を発見したことで新たに何に関心が行ったか。科学史の楽しさというのは、ここにあるように思いました。数式を詰め込むだけじゃ絶望的に何もかも足りない。理科にも副読本が欲しかったですね。科学史は絶対に楽しい。

ところで、理論物理学者と数学者の畑の違いがいくつか触れられていまして、これも面白いところです。純数学的技術を多用した論文は反応が悪いのだそうで、少し前にNHKスペシャルでポアンカレ予想の証明を取り上げた時には逆に、ペレルマンが物理学の技術を多用したら数学者に理解できなかった、なんてのがありました。

読み終えて少し経ちましたが、今日のNHK「コズミックフロント」で大マゼラン星雲の超新星1987Aを取り上げていました。小柴博士のスーパーカミオカンデでも有名なあれですが、本書はその成果をカバーできないタイミングです。

「ホーキング未来を語る」とかも読んでみたいと思います。そっちの方は本当に一般人でも読めるように書かれているとか何とか。

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