雑記-不定期な独り言-
2004/6/21
「クトゥルー」
創元推理文庫「ラヴクラフト全集」や青心社「クトゥルー」あたりを全巻読み終えた…というのは結構前の話なのですが、この壮大で深淵で救いのない作品群は、とてもとても魅力的なものでした。で、私は純正派とかいう方らしいです。
※ラヴクラフト自身の作風や設定を好む人たちを純正派、わかりやすい設定で体系化された方を好むのがダーレス派、らしいのですが、この分類は概ね同意できます。
設定以前に作風が全然違うので、これは好みがわかれるところだろう、と考えていたところでした。というのは、ラヴクラフト御大らの作品は、大体、聞く者とてないだろう独白メモの形だったり、誰かが死んだ後に手記が発見されたとか、最後に成れの果てが現われるとか、著者自身の投影である人物が今度こそ本当に失踪するとか、救いのない終わり方をするものが多いのです。もちろん、その過程で遭遇する、「クトゥルー」その他邪悪な存在により引き起こされる事象というのも、ただ人間は翻弄されるだけのちっぽけな存在に過ぎないということを、繰り返し繰り返し見せつけるという、これまた救いがありません。
ある意味ではワンパターンかもしれませんが、アイデアと構想力で見せていくので、毎度毎度圧倒され、楽しめるのは間違いありませんが。
一方、ダーレス作品、とりわけ彼の設定では「クトゥルー」と敵対しているとされる「ハスター」の下僕「バイアクヘー」を使役して、復活しようとしている「クトゥルー」を撃退するという一連の作品は、慄然たる契約もなしに旧支配者(クトゥルーを始めとする邪悪な原始の神々)の下僕を使役して、あまつさえその下僕の力で、より上位のクトゥルーをどうにかするなんて…という違和感を覚えるのです。これまた人外どころか宇宙的「力」である旧神(旧支配者を封印又は追放した神々…だが善悪不明、ムアコック的に言う宇宙の天秤のような存在?)でさえ退治できなかった(しなかった)連中を、人間がどうこうしちゃっていいのか!? と。
そしてこの比較をして連想したのはハリウッド映画「GOZILLA」でした。「GOZILLA」論は既に多数の方がされているので省きますが、台風のような天災として人間にはどうにもできない「ゴジラ」と、人間が力を合わせて打ち勝ってしまう「GOZILLA」の違いは、純正派とダーレス派によく当てはまります。
単純明解な娯楽性という点ではダーレス派と「GOZILLA」が勝っていると思います。彼らだってオリジナルを熟知していますから、これは相当な挑戦であると評価されるべきでもあります。オリジナルが滅ぶほど挑戦だらけになったら悲しいですが。
けれども私としては、クトゥルーや「ゴジラ」に単純な娯楽性は求めていないので、彼ら挑戦者には批判的な視点になるのでした。
2001/5/10
「≒パソコン?」
Appleから新型iBookが出ました。初代の丸いデザインからは打って変わって、PowerBookを連想するシャープなデザインと、シルバーの薄いボディが特徴です。そして今日、ラジオで「iBook買ったんだ」という言葉を耳にして思いました。
iBook・iMacやVAIOはパソコンではないのではなかろうか?
つまり、「iBook」「iMac」「VAIO」という存在なのです。彼らのみが持つファッション性、流行性、カリスマ性。パソコンという枕詞が不要な知名度、ブランド力。冒頭のラジオ番組の司会は、パソコンとは何の関係もない普通の音楽番組なのに、「AppleのノートパソコンiBook」或いは「AppleのiBook」ではなく単刀直入に「iBook」と言って、その意味がリスナーに通るのです。これができるのは、先に挙げた三つぐらいのものでしょう。いきなり「デスクパワー」とか「メビウス」と普通の人に言ってもわかりません。
大変な産物です。敬服します。
2001/3/25
「皇帝病(違」
いつも通り(誤)のアカデミックな話題を。欧州で騒動になっている口蹄疫について。
口蹄疫は家畜の急性感染症(病原体はウイルス)で、対象動物は牛、水牛、鹿、綿羊、山羊、豚、猪などとなっています。偶蹄類(蹄が二つに分かれている動物)ならかかるようです。発病すると口、舌、蹄、乳房、或いは粘膜に水泡ができ、ただれ、発熱、唾液を垂れ流す、歩行障害などの症状を起こします。死亡率は低いのですが、無論、食肉になどできようはずもありません。急激に痩せてしまい、子どもだと衰弱により死んでしまうことがあります。
破れた水泡の内容物は言うまでもなく、接触や空気感染により広がります。伝播距離は数十kmに達し、報告では陸上60km、海上250kmを移動した例があるとのこと。潜伏期間10日以下。不活性化ワクチンは存在しますが、治療法はありません。
注意すべきは、回復後にも継続してウイルスが繁殖するキャリアーになってしまうことで、そのため燃やし尽くす必要があるのです。
参考Webページ:
…というわけで、感染したら最後、ということがわかります。売り物にならないどころの話ではありません。幸いにして人は発病しないので(恐らく感染もない)、人手を使って警戒することができます。むろん、人に付着したものから感染することはあり得るので、厳重な消毒が必要ではありますが、検査などにより病原体を確認次第、家畜を燃やし、小屋などの一帯を消毒することで、拡大を抑えることはできるでしょう。初動態勢が整っていれば。
過去において日本でも報告があるようです。
今回、日本の対応はなかなか早いようです…少なくとも農家でない人間が見る限り。実際にちゃんと動けば、大丈夫なんでしょう。ただ、この病気に関しては、流行させないことが「対応」なのであり、多数の家畜の命と畜産農家の生活が脅かされることに変わりはありません。
※追加(2001/5/10)
何やら人への感染例が報告された模様。歴史上二人目だそうです。発病するのか、そしてキャリアーにはなるのか、まだ不明。
2001/1/31
「デコイ」
中小企業経営者福祉事業団(KSD)からの不正献金疑惑で、一人更迭された。金は秘書が受け取ったが返したと答弁し、細かい突っ込みにしどろもどろとなって墓穴を掘った、額賀前経済担当大臣だ。まあ毎度いつもの光景で…、それとも、政治への関心が薄れて投票率が下がれば自民優利になるという、綿密で周到な作戦のための駒になったのだろうか!?
さて、これを追求すべき野党の方にも、献金を受け取っていた人がいる。民主党の菅幹事長その人だ。だが菅氏は、「秘書が受け取ってしまっていたので返還する」と釈明した。かつてこれほど潔い表明があっただろうか。いずれも主語は「秘書」だが、その内容には天と地ほどの差が見て取れる。
政治は金がかかるものだが…しかし政治家になってから、屋敷が建つ人と、屋敷が消し飛ぶ人とがいるのは興味深い。政党レベルではなく、内閣で何らかのポストに就くようならば、アパート暮らしでは対外的に格好悪いから、多少の家は持っていてほしいが、地方議員程度でも屋敷が建つのは、実に摩訶不思議な錬金術だ。
金の方から寄ってくる。見返りを求めて。それだけ政治家が強い力を持っているということだ。そして強い力は自制が必要だ。だが果たして自制はどの程度できているのだろうか。
2001/1/30
「風船」
また妙な「調査結果」が出てきたようで。学校の成績が良くてもストレスを感じている子どもがいる、という内容。今までは成績と関係ある、と思われていたわけで、驚きを禁じ得なかった。成績優秀=ストレス無縁であるのなら、男子マラソンの故・円谷幸吉選手はメダルを取るぐらい成績が良いから、自殺するなどあり得ない、という理論になるわけですなあ。
余裕があるかどうかという側面が強いのではないのかな。成績が良くたって、それが精一杯だったり、周囲がそれ以上を望んでいる状態なら、息切れは時間の問題というもの。オリンピック選手を殺して40年近く、まだ「プレッシャーに弱い」とのたまうのだろうか。あれほど追い込んでおきながら、責任逃れをするというのか。
プレッシャーを克服するのはあくまで本人だが、周囲からの影響を無視して「弱い」だの「信じられない」だの、実に無責任なことこの上ない。プレッシャーに強い人格に育てられなかったにもかかわらず、冷徹なまでに肩に重しを乗せ足かせをはめ、心を壊しておいて「子どもがわからない」。
子どもは大人の裏写し。各個人の更正は無論必要だが、根本的な原因は大人にあると考えるべきだろう。自戒も込めてそう考える。
2001/1/14
「Revive...」