兵器について

愛しい戦車

　システムソフトの「大戦略88」。私をミリタリーに目覚めさせたのは、このゲームでした。これは世界各国ごちゃ混ぜの兵器リストの中から選んで生産し、それを動かして戦術を競うゲーム。ちなみに主力戦車はレオパルド2(独)、軽戦車はAMX-10RC(仏)でした。
　そして「スーパー大戦略」にて、生産タイプ、つまり実質的に国を選べるようになりました。私は守りを重視したので、この時、最高の防御力を誇る「チャレンジャー」を持つイギリスを選択し、そして私は戦車に目覚めてしまったのでした。一時は「戦車マガジン」を買うまでになり、果ては高校の卒業文集に「チャレンジャー」のスケッチを描いたというのは秘密です。ちなみに「戦車マガジン」は現在「Ground Power」誌となり、現代兵器よりも60年代以前の兵器が中心になり、価格も倍になってしまったのであまり読んでいません。ああ…軍縮は正しい歴史の歩みですが、なんだか寂しい気もします。

　戦車は…美しい。「チャレンジャー」のずんどうな砲塔も好きだし、「メルカバ」のごつごつした感じも個性的だし、「T-80」のパネル装甲もいかめしくていい感ぢ。デザイン面では現代戦車の中で、「レオパルド2」や「90式戦車」は無個性派かもしれません。「90式戦車」に関しては、メカニズム的には「74式戦車」から受け継がれた、油圧姿勢制御が好きなんですが。
　形と言えば、昔の砲塔は鋳物だったので丸い物が多かったですね。「センチュリー」や「レオパルド」、「61式戦車」の時代まで。でも私はあくまで現代兵器が好きなんです。確かに無機質な車両も多いでしょうが、現代産業の産物でありながら、表情を持った車両があるということが好きなのかもしれません。

P.S.
　戦車の原型はファランクス(ローマの重装方形陣)にあるらしいとか。

乗り物は生き物だ

　道具は道具のままの、単なる物体でしょうか?
　私は、少なくとも乗り物に関しては違うのではないかと思っています。自転車はもとより、バイクも自動車も、人が乗ることで生き物に近い存在になると考えているのです。人型ロボットならなおさら。
　戦争というのはケンカから始まったはずです。己が拳を使った殴り合いから。一対一からムラ同士の戦いになり、そして鈍器が発明され、飛び道具が発明され(最初は石でしょう)、刃物が発明され、銃が発明され、最終的には現在の戦争と兵器に到達したのではないでしょうか。そして、人が操る武器、人が操る乗り物を使っている限り、本質的にケンカと違わないと考えています。しかし、そういう視点で戦争を見てみると、ケンカから大きく外れる物があります。弾道ミサイルです。
　弾道ミサイル。特にICBM。あんな巨大な物が無人で自動制御で飛んでいく。撃ち落としても誰も痛くない。私にとっては大変違和感があります。乗り物でないくせに乗り物よりも大きいからか、なんというか…卑怯な感じがするのです。多弾頭とか核弾頭、ガス弾頭は論外。ロマンがないということかもしれません。人殺しにロマンというのは的外れではありますが。
　ちなみにこのロマンについては、第一次世界大戦の英海軍大臣ウィンストン・チャーチル(後の首相)も述べているところです。

マジシャン・英雄

　人殺しを美化するつもりはありませんが、志願兵により構成された軍隊同士の戦いは、非人道的であるという点以外で非難することはできないでしょう。彼らは戦うことが仕事なのですから。運転士が電車を走らせるように、銃に弾を込め、或いは剣を抜き、同じく戦うべく赴いた者に対して、その力を打ちつける。それは箱庭の中で行なわれる、血なまぐさくはあるけれど、一つの物語なのです。民間人が巻き込まれなければ。

　チャーチルが危惧したほどには、それ以降もしばらくはボタン戦争的にはならず、英雄と呼ばれる人は数多く現れました。

　さて、英雄にはあだ名が付くものです。あだ名が付く軍人というのは、良くも悪くも特徴のある人ということ。最近では…退役されたはずですが、湾岸戦争当時のアメリカ軍に「黒熊」ことノーマン・シュワルツコフ将軍がいました。
　現在の戦争は大義名分に乏しく、正義を振りかざすことが難しいので、世論を導くことができません。そのため被害を最小限に抑えなければならず、遠隔攻撃だけで大勢を決定する、戦術的に見るものがない味気のないものになっています。戦術を駆使する必要のない戦争というのは、戦略で優位に立っていたということで、それだけ成功したと言えるのですが。やはり英雄の話をするには第二次世界大戦までさかのぼるべきですね。

　ドイツのロンメル将軍は「砂漠の狐」と呼ばれました。彼は優れた軍人であるだけでなく、人間的にも尊敬されていたようです。アメリカの影響色濃い日本の戦後教育においてドイツは、我が国自身の旧軍部よりも悪役になっているにもかかわらず、そのアメリカでも彼は人気があるのです。詳しくは映画「砂漠の鬼将軍」をご覧あれ。

　ロンメル将軍は(その指揮下の軍隊は)、アメリカ人を数え切れないほど殺したはずです。第二次世界大戦はアメリカの物量が制覇した戦いであり、ヨーロッパ戦線でのドイツは、アメリカ以外に対しては圧倒していました。物量作戦…敵より多くの兵を用意することが勝つための第一歩であると、孫子の兵法で既に書かれていたそうで、それが大規模に証明されただけの話ではありますが。
　そのアメリカに対しても、ドイツや日本は被害以上の損害を常にアメリカ軍に与えていたといいます(日本の場合は本土が空襲される以前の話でしょうが)。戦術で戦略を克服する、大変厄介な相手です。しかし、ああした映画が作られる。日本でも放映される。それはやはり彼が英雄だからでしょう。

　日本の学徒動員、ゲリラ同然のベトコンと、現代戦争は民間人を巻き込むようになってしまいましたが、戦争のロマンを語る上で民間人の話は余計かもしれません。私は新たに戦争が起こることを望むわけではないし、単に過去の美化された戦争を楽しむだけの者ですから。
　ロマンを感じる、感じてしまう。私は素直にそれを楽しみたいと思います。だから言います、私は戦争英雄物語が好きなんです。

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